川崎市の努力が報われている。川崎市が2005年から手がけている「川崎市イメージアップ事業」をご存じだろうか。川崎の強みや魅力を市民や他都市の住民に広くアピールし、都市イメージの向上を図るために行っているもので、市民・事業者・団体などから事業を募集し、市が審査・認定し、支援する制度だ。この制度が始まってから10年が経過した今年、不動産・住宅情報サイトのSUUMOの調査によると、川崎市の武蔵小杉は住みたい街ランキングの5位に選ばれている。1位は吉祥寺、2位は恵比寿といった常連であり、6位に品川、7位に中目黒、8位に表参道が続き、それらの街を抑えての堂々の5位だ。これらと肩を並べる武蔵小杉はいかに人気が高まっているかが伺える。
川崎の地価上昇率は神奈川No.1
2015年の神奈川県における地価公示の上昇率ランキングの1位は、川崎市中原区の中原5-2の+8.5%だ。2位も川崎市中原区の中原5-8の+7.3%と続いている。神奈川県の地価上昇率地点のトップ10のうち、6つのポイントが川崎市で、残り4つは横浜市のポイントだ。この地価公示の標準値番号の「5-」とは、商業地の標準地ポイントを表している。川崎市はいずれも住宅地ではなく商業地の地価上昇率がトップ10にランキングイン、最寄り駅でいうと、武蔵小杉駅や川崎駅、溝の口駅周辺の商業地だ。商業地の地価が回復しているのは川崎市の経済が力強く回復している証拠と言える。
昔は悪いイメージだった川崎
ところで、少し古い資料になるが、川崎市イメージアップ事業に取り組むきっかけとなった2004年当時の川崎市のイメージに対する年代別のアンケート調査が残っている。当時の50歳代以上の人が川崎に抱くイメージとしては、1位:産業のまち、2位:公害のまち、3位:労働者のまちとなっていた。20歳代では、1位:娯楽のまち、2位:産業のまち、3位:公害のまちとなっている。若い世代では良いイメージを持っているが、年代が高くなるほど芳しくないイメージを持っているというのが特徴であった。当時から10年以上経ち、当時の若い世代がマンションや戸建ての購入世代となっており、今、川崎市は武蔵小杉が住みたい街No.5に選ばれ、地価公示も多数の上昇地点を出すように変わった。
努力があってこそのイメージ改善
このようにイメージが変わりつつある川崎であるが、決して自然発生的にイメージが良くなったわけではなく、そこには数々の努力があった。一番貢献したのは武蔵小杉駅周辺の再開発が成功したことだろう。武蔵小杉は、以前は大きな工場が建ち並んでいたため、広い敷地が残り、かつ地権者も少なかった。また、人気の東急東横線沿線であり、さらに2010年にはJR横須賀線も交わり利便性も加速した。成功の条件は揃っていたが、それでも街の人気をここまで上げたのは、関係者の努力があってこそだ。計画的に開発された新しい街は商業施設や公共施設も充実している。
商業施設が豊富で羽田にも近い
住宅だけではない。2002年にはラ チッタデッラ、2006年にはラゾーナ川崎などの商業施設がオープンし、2013年には大型シンフォニーホールであるミューザ川崎がリニューアルオープンしている。ショッピング施設や映画館が充実し、遊ぶにも楽しい街へと生まれ変わった。さらに2014年の春頃から国際便が増便され羽田空港の国際化が一気に進んだことも、川崎エリアの再開発を加速させている要因だ。都心へも近く、横浜へも近く、そして世界へも近くなった。
これからも川崎人気は続くであろう
川崎市はもともと立地としてのポテンシャルは高かったが、やはりここまで人気を上昇させたのは、住民と行政が一体となった努力があったためではなかろうか。悪いイメージを払拭するために始めた川崎市イメージアップ事業スタートから10年、官民一体で作り上げた良いイメージは、今後も底堅い人気を生みそうだ。