人工知能(AI)の将来性と不動産テック

人工知能 ストックフォト(写真=iStock/人工知能 ストックフォト)

人工知能の将来性に注目が集まっています。金融ではフィンテック、不動産では不動産テックといった新たな言葉が生まれています。さまざまな分野の発展の大きな影響力を持つ人工知能ですが、これからはどのように応用されていくのでしょうか。今回は、人工知能とはどのような技術なのか、なぜこれほど急速に発達しはじめたのかを解説しましょう。

人口知能の向上が著しい

 世界で人工知能への注目が高まっています。最近では、3月に行われた韓国人プロ棋士イ・セドル氏と囲碁ソフト「アルファ碁」との対戦が話題になりました。
 アルファ碁は2015年にも囲碁の欧州チャンピオンであった中国人棋士ファン・フイ氏と対戦して全勝しており、イ・セドル氏との対戦でも4勝1敗で勝ち越しました。イ・セドル棋士は間違いなく世界トップクラスの実力の持ち主だったため、人工知能である囲碁ソフトがプロ棋士に勝利したことは世界中のメディアで報道され、衝撃が走りました。

 この人工知能を開発したのは、イギリスの人工知能ベンチャー企業「ディープマインド」です。ディープマインドは画期的な機械学習アルゴリズム「Deep Q Network」を開発しており、このアルゴリズムによってアルファ碁は開発されました。
 歴史を振り返ると、人工知能と人間の対戦は以前から何度も繰り返されてきました。今になってこれほど大きなニュースになったのは、ディープマインドが得意とする「機械学習」に秘密があります。

 1997年、IBMの開発したチェスソフト「ディープ・ブルー」がチェスのチャンピオンであるガルリ・カスパロフ氏に勝利しました。カスパロフ氏は1996年にはコンピュータに勝利したものの、1997年の対戦ではコンピュータに世界で初めて敗北し、大きな話題となりました。
 チェスでは勝負がついていたのですが、しかし、チェスと囲碁では局面の数がまったく異なります。囲碁の情報量は膨大であるため、コンピュータでは人間に勝てないと言われてきたのです。

 しかしチェスの勝負で、コンピュータがトッププレーヤーを破ってから20年近くがたち、人工知能の技術も大きく変化しました。アルファ碁がこれまでのコンピュータと異なるのは「機械学習」を繰り返して、自分で学習して強くなったという点です。
 人間が最初から複雑なプログラミングをして囲碁に強い思考回路を作ったのではなく、アルファ碁は自分で学習して強くなったという点でこれまでのコンピュータとは異なり、世界に衝撃を与えたのです。

 機械学習は、近年の人工知能の著しい向上を支えているテクノロジーです。機械学習とは、人工知能が自分で学習して知能を高めていくプログラムのことで、たとえは翻訳ソフトや文字入力ソフトなどに活用されてきました。この機械学習も以前から話題になっていましたが、近年急速に発達しているのは「ディープラーニング」という新たな技術が生まれたからです。
 これまでの機械学習では、類似する文字や単語をどのような基準で分けるのか、その基準は人間がプログラムしていました。しかし、ディープラーニングではその基準をコンピュータ自身が探すのです。コンピュータは膨大な情報から、あるものを把握するために必要な情報を絞って答えを導き出そうとします。結果的に答えが間違っていたら、やり直して正しい答えを導き出すまで繰り返します。繰り返して答えを探索することで正確に答えを導き出すことができるようになるのです。これが最新の人工知能の持つ機械学習の力です。

 このように、人間が複雑なプログラムを作るのではなく、ディープラーニングという機械学習の新たな手法によって、コンピュータが自分自身で学習し、これまで不得意とされてきたあいまいな判断もできるようになるというのが、近年の人工知能が急速に実用化されている理由なのです。

人工知能のビジネスへの応用

 高度に発達する人工知能は、様々な分野で応用されています。もっとも身近なものは、iPhoneに内蔵されている「Siri」ではないでしょうか。Siriは、使用者が話しかけると何でも答えてくれます。それでも少し前までは、どうとでも受け取れるような曖昧な返答をすることも多かったのですが、最近ではレストランを予約できたり、目的地までのアクセス方法を調べてくれたり、ちょっとした疑問に答えてくれたり、非常に便利になっています。Siriも新たなiPhoneが発売されるたびに進化しているのです。

 また、人工知能の利用に非常に注目の集まっている分野の1つに金融と不動産があります。たとえば、あらゆるデータや文書を分析し、自分で株式の売買の判断を下す人工知能も開発されました。以前からコンピュータを利用するヘッジファンドなどは多く存在しましたが、最近は人工知能に機械学習させることで、いずれは人工知能のみでマーケット予測し、投資戦略を策定し、売買できるようになることを目標として研究が進められています。

 他に応用されている分野として「パターン認識」を直接的に応用したセキュリティ分野での活用も模索されています。たとえば、最近「パナマ文書」で注目されたグローバル企業や富裕層個人が利用するタックスヘイブンやマネーロンダリングなどを、パターンを繰り返し学習することで検知し、問題を発見できるようになると期待されています。

 さらに、人工知能が大量のデータを解析し、投資分析や投資判断に活用するという点では不動産取引の分野でも大きな進展が期待できます。これまで不動産業界には価格の不透明さや情報の非対称性がありました。人工知能によって不動産の適正な賃料や、将来のキャッシュフローが予測できるようになると、不動産取引における不透明感も解消されていくでしょう。

人工知能魅力と問題

 しかし、このような人工知能の急速な発達と活用には、懐疑の念を抱く人も少なくありません。最近話題になったのが、マイクロソフトのリリースした人工知能「Tay」がTwitterで不適切な発言を多発した事件です。TayはTwitter上の発言から機械学習して、ユーザーとコミュニケーションをとるためにリリースされたのですが、リリース後Tayに人種・性差別、暴力的な発言などを学習させるユーザーが急増し、不適切な発言を連発するようになってしまいました。そのため搭乗から数時間で停止させられてしまいました。このジョークのような事件は、一部の人々の人工知能に対する嫌悪感を増したようです。

人工知能は学ぶ対象によっては、人間に敵対する存在になるかもしれない、という恐怖感を持っている人は多いようです。確かにSF映画などでは、近い未来で人工知能が人間に対立して反乱を起こすようなテーマが多く、一部の科学者は実際にそのような未来が来ることを予測しています。また、人工知能が人間の労働を代替し、人間の雇用を奪うと主張する人もいます。人工知能という未知の存在に対して、不安を抱く人はこれからも増えるかもしれません。この不安感は正しいものなのでしょうか。

人工知能の将来性と不動産テック

 人工知能が実際に活用されている分野を見ると、それは専門に特化した領域であることがわかります。

 金融、不動産、交通、コミュニケーション、ゲームなどその分野に特化して機械学習を繰り返し、特定領域においてのみ人間を越える能力を持つようになっているのです。今のところSFに出てくるような、全知全能の人工知能はまだ生み出されていませんし、全領域にまたがる人工知能が生み出されるのは、それが可能だとしても、まだまだ先になるでしょう。また、Tayの例からもわかるように、機械学習は学習する対象によって、人間に役立つ高度な人工知能にも、役立たない無能なプログラムにもなります。

 人工知能に対して期待と恐れが交錯しますが人工知能をコントロールするのは人間です。自動車が便利な道具になるのか、人に危害を加える鉄の塊になるのかは使う人によって異なるのと同じことです。
 不動産テックの分野では、適性賃料の推計や将来のキャッシュフロー予測など、「これまでできなかった事ができるようになる。あるいは、大変だったことが簡単に行えるようになる」という点では、人工知能もこれまでの科学技術の進展と同じ事ととらえていいでしょう。
 必要以上に恐れることなく、人工知能の将来を期待したいものです。

≫ 参考記事:GDP600兆円に向けて政府が人工知能に投資目標 フィンテック、不動産テックの未来は?

賢い不動産投資を始めよう

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2016年5月24日 10:51 AM カテゴリー: おすすめ, テクノロジー, 不動産投資

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