不動産の権利関係をかんたんに解説

不動産の権利 
(写真=PIXTA)

 不動産投資をしていると様々な権利関係に触れることになります。しかし不動産投資初心者の方はもちろん、これまでに投資の経験がある方でも権利関係をしっかり理解できている方は実は少ないのではないでしょうか。今回は不動産の権利関係を、具体例を用いて簡単にまとめました。

不動産の物権と債権

 不動産には様々な権利があります。不動産の権利関係を疎かにすると、トラブルの温床になります。そのため不動産取引においてもっとも注意が必要なのです。特に中古物件の取引には、権利関係の確認はよりしっかり行なっておかなければなりません。トラブルを避けるためにも、取引を行なう前から権利関係を押さえておく必要があります。不動産の権利は多くのものがありますが、大きく分けると「物権」と「債権」に分けられます。

・物権
 物権とは法律上「物を直接的・排他的に支配することで利益を受けることができる権利」であるとされています。つまり不動産を自分が直接的に支配し、その不動産には他人の物権が同時に存在することはない、並存する物権は排除されるという権利です。つまり1つの不動産には1つの物権しか成立しません。物権は強力な権利であるため、内容が競合する物権の間では、先に成立した物権が優先されます。

 たとえば、自分の所有する土地に他人が勝手に住居を作ってしまった場合、自分が所有者であれば、物権(所有権)を侵害している相手に対して返還請求訴訟を起こすことができます。勝訴すれば強制的に撤去することができます。物権には所有権の他にも「占有権」「地上権」「永小作権」「地役権」「入会権」「地上権」「留置権」「先取特権」「質権」「抵当権」があります。

・債権
 物権に対して債権とは「特定の他者に対して財産上の行為を要求できる権利」とされています。債権は他者の行為に対して権利を実現するものなのです。物権は1つの不動産に対して1つしか成立しませんが、債権の場合は契約の数だけ債権が複数存在することができます。債権は契約を結んだ相手に対してのみ主張できる権利ですので、物権よりも弱い権利であり、原則的に債権よりも物権の方が優先的な効力をもつ、とされています。

 債権には「貸借権」「使用貸借権」「引き渡し請求権」などがあります。これが不動産の物権と債権ですが、具体的にそれぞれの権利について見てみましょう。

所有権と占有権

・占有権
 所有権は物権の1つですが、土地・建物の両方に関連する権利です。不動産を事実上支配しているケースでは物権の1つである「占有権」が生じます。占有権はどのように支配したか、という点は問われないため、例えば他人の土地に不法に家を建てても、一定の期間占有していれば民法上は占有権が認められます。たとえばAさんの土地にBさんが勝手に家を建てて占有した場合、Bさんは無権利者であっても占有権という権利が認められます。民事訴訟でBさんの無権利が確定すればBさんの権利は失われますが、確定するまではBさんの権利は保護されます。また無権利者であってもBさんがAさんの土地を長期間にわたって占有し続けた場合、土地の所有権を取得することができます(所有権の取得時効)。

・所有権
 占有権は不動産の支配の事実関係によって認められる権利ですが、事実関係とは無関係に認められるのが「所有権」です。所有権はその不動産の使用、処分が自由に行なうことができるという権利です。またマンション・アパートなどの共同住宅の場合は「建物区分所有権」があります。これは1つの建物を占有部分と共有部分に分けた場合、専有部分に生じる権利です。共有部分は所有者全員によって共有されることになります。簡単には自分の区分所有している部屋の玄関からベランダまでの室内は自分が所有権を持っており、それ以外のバルコニー、通路、階段、エレベーター、水道・電気の設備などは共有ということです。

・敷地利用権
 マンション・アパートは区分所有されるものが多いですが、区分所有するオーナーがその建物が建てられている土地を占有できる権利を「敷地利用権」といいます。マンション・アパート等の共同住宅は専有部分と共有部分があると説明しましたが、土地ももちろん共有しています。この土地の持ち分を敷地利用権というのです。敷地利用権は規定で定められていなければ、専有部分の床面積の割合によって、持ち分が決められます。区分所有している面積がマンションの全床面積の20分の1ならば、マンションの建っている土地の面積の20分の1に敷地利用権の権利が発生するということです。

 不動産取引においても敷地利用権が関わることがあります。たとえば、保有するマンションを処分したいときに、そのマンションの規約によって敷地利用権と区分所有する物件の所有権を分離して処分することができない場合、敷地利用権は登記することができませんが、分離が認められていない場合は登記することができます。取引時は注意しましょう。 

借地権

・地上権
 地代を支払って、その土地を優先的に借りることができるという権利を借地権と言います。借地権は、土地の賃貸契約が成立しており、固定資産税・都市計画税を支払っている場合に成立します。借地権にはさまざまな種類のものがありますが、その1つが「地上権」です。地上権とは物権の1つで、土地を直接的に支配できる権利です。地上権の所有者はその地主の許可なく、地上権を登記したり、他人に譲渡したりすることができます。

・貸借権
 地上権と似ている権利に「貸借権」があります。これは債権、つまり契約によって結ばれる権利で、貸借人の承諾を得てその土地を支配することができる権利です。登記や他人への譲渡には地主の承諾が必要になります。また貸借権は地上権とちがって、抵当権がありません。ただし現在ほとんどの物権は貸借権で設定されているため、地上権が関わる取引は少ないでしょう。

 同じ借地権でも地上権より貸借権の方がずっと弱い権利です。借地権はあくまで契約に基づく債権のため、地主の承諾がなければ登記できないと説明しました。ほとんどの場合、地主は登記に応じないと考えていいでしょう。この場合、土地所有者である地主が土地を第三者に譲渡した場合、貸借人は新しい所有者に対して貸借権が主張できません。ただしこれは原則上のことで、実際には貸借権が登記することができなくても一定の対抗力は認められています。つまり所有者が変わっても貸借権が無効になって、すぐにその土地を追われるようなことはないように保護されているのです。

・永小作権 
 貸借権の1つに「永小作権」という権利があります。これはその土地で耕作・牧畜を行なう場合、小作料を支払って利用するという物権です。昔は立場の弱かった小作人を守るために制定されていました。永小作権の存続期間は20年以上50年以下とされていて、期間が規定されていなければ30年まで、更新した場合は50年まで権利を保有することができます。現在ではほとんど見られないため、知識として知っておく程度でいいでしょう。

・地役権
 ある土地の便益を上昇させるために他人の土地を利用するという借地権の一種が「地役権」です。例えばAさんが自分の土地から出入りするために、Bさんの土地を通行する必要がある、というときに発生する権利です。このようなケースでAさんの土地のようにBさんの土地を利用しなければならない土地を「要益地」、Bさんの土地のようにAさんに使わせてあげる土地を「承役地」といいます。

 不動産取引において地役権が関わるのは、地役権が発生する土地を譲渡するケースです。Aさんの土地の所有権が移転されれば、自動的に地役権も移転されますが、このとき所有権移転登記と合わせて「地役権移転登記」を行なわなければなりません。不動産取引において頻繁に触れる権利ではありませんが、重要な権利です。

抵当権

 不動産取引においてよく触れる権利の1つに「抵当権」があります。これは住宅ローンを借りる時に金融機関から登記される権利で、通常土地と建物の両方に設定されます。住宅ローンを借りた場合は、抵当権は金融機関が保有することになります。住宅ローンは不動産を担保としてお金を借りるため、債務者が弁済しない場合は不動産から弁済を受ける=不動産競売が行なわれることになります。抵当権は債権者と債務者の間で抵当権設定契約が成立し、登記していることで成立します。またローンをすべて返済してしまえば、抵当権は消滅します。

 中古物件を取引する場合、物件の前の所有者が住宅ローンを借りていて抵当権が設定されたままになっているケースが多くあります。このような場合、物件の所有権移転登記と合わせて抵当権抹消登記を行うことが一般的であり、抵当権まで引き渡されることはありません。中古物件を対象とした不動産投資を行なう投資家は、抵当権の仕組みはよく理解しておく必要があるでしょう。

 今回は簡単に不動産取引に関連する権利を紹介しました。権利関係は不動産取引においてもっとも重要なポイントであるといっても過言ではありません。ここに書いたもの以外にもさまざまな権利があります。一度しっかり見直してみてはいかがでしょう。
 

賢い不動産投資を始めよう

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2015年11月6日 7:00 AM カテゴリー: 不動産投資

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