商業・物流に見られる産業構造の変化とは
一方で、物流についてもその産業構造に変化が見られている。1つはネット販売による電子商取引の拡大だ。スマートフォンの普及が電子商取引の利便性の向上に影響し、更なる需要を生み出している。この構造変化がリアル店舗の動向に関連し、商業REITにダメージを与えているとみられる。物流REITは大きく成長しているものの、商業REITの成長率は最も低かった。
消費者の行動が、店舗に足を運んで、実物を手に取って確認してから購入を決めるというスタイルから、ネットで見て、通販で買うというスタイルに変わってきている。そのため、ネット通販用の倉庫の需要が高まり、実店舗である商業施設の需要が弱まっていると考えられる。
また、倉庫の工場化も変化の一つとして挙げられる。最近の大型倉庫では、組み立てや梱包といった単純作業を実施している。物流会社はタイムリーに商品を発送でき、また工場側も在庫を抱えなくて済むというように、双方にメリットがあるためだ。このような産業構造の変化が大型倉庫の需要を底堅くしているといえるだろう。
オフィスの構造変化 新築のフリーレントが当たり前
次に、オフィスビルの産業構造の変化についてはどうであろうか。J-REITに組み込まれているオフィスビルは、大型のマルチテナントビルが多い。一棟貸しが多いホテルや物流に比べ、空室リスクのリスク分散は図れているものの、空室率が賃料に直接影響してしまう。
特に、オフィスについては、昨年では、賃料の劇的な回復は見られていない。オフィスビルの産業構造の変化という意味では、団塊の世帯の退職に伴い、就労人口が減っているにもかかわらず、オフィス供給が増え続けていることだろう。オフィスは、一旦供給されてしまうと、50年以上にわたり、そのビルはオフィススペースを供給し続けることになるため、供給量の調整は難しい。そのため「新築オフィスはフリーレントが当たり前」という産業構造の変化を生んでしまった。
住宅の構造変化 単身世帯はシェアハウスへ流れるも需要は堅調
