年金とペンションとAirbnb

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年金
(写真=Thinkstock/Getty Images)

老後の備えは自己責任と考える人が8割

 老後破産という言葉があります。2014年9月にNHKが「老人漂流社会 “老後破産”の現実」という報道番組を放送したことで、老後破産という言葉が注目を浴びるようになりました。

 老後の備えとして、貯蓄に加えて国民年金や厚生年金のような公的な年金と、民間の保険会社などが販売している私的な個人年金があります。しかし、少子高齢化の進展や巨額の財政赤字を背景に、しばらく前から年金制度に対する不信や不安が高まっています。

 社会保障制度は国が安定するための基盤ですし、憲法には「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の役割も明記されています。そのため、財政の制約がある中でも、国は年金制度の向上及び増進を図っていかなければなりません。国民に生存権を保証するという国の役割を考えると、将来、基金の財政が破綻して年金が受け取れなくなるという意見は極論といえるでしょう。

 必要以上に年金について不安視することはありません。しかし、日本の年金財政が苦しいのは確かなことです。納付と給付のバランスは、将来の世代になればなるほど厳しくなると予想できます。そういう状況を反映してか、オランダの総合人材サービス会社であるランスタッド社の調査によると、日本では老後の備えを「自己責任」と捉える人が8割を超えています。55歳以上に限ると9割です。なお、世界平均は64%でした。
世界平均に比べ、日本は、自分で老後に備えるという意識が強いことがうかがえます。

年金とペンション経営

 年金は英語ではannuity、またはpensionという単語で表されます。日本の公的年金を管理する組織は「年金積立金管理運用独立行政法人」です。この組織は、通称「GPIF」と呼ばれています。GPIFの英語名は、Government Pension Investment Fundです、この頭文字を取ってGPIFです。

 Governmentと冠していますが、GPIFは公務員の共済年金を管理運用しているのではなく、公的年金のうち、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っています。なお、公務員の共済年金は、国家公務員共済組合連合会(通称「KKR」)と、地方公務員共済組合連合会(通称「地共連」)が管理・運用を行っています。

 GPIFに話を戻すと、GPIFのPはPensionのPです。ペンションというと、自然に囲まれた高原にある西洋風のお洒落な建物で、朝は焼きたてのパン、夜は肉や魚の西洋料理を提供する民泊施設を思い浮かべる方が多いと思います。

 ペンションとは、本来は西ヨーロッパの国々において「比較的低価格で泊まれる小規模な民泊施設」のことを指します。これは、イギリスにおいてはベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)と呼ばれます。日本では夕食が提供されますが、欧州では夕食が提供されないのが一般的です。

 ペンションという言葉は、ペンションは年金を意味し、民泊施設も意味します。では、最初の意味はどちらが先かというと、もともとは、「年金」が先で、「民泊施設」が後です。欧州では、退職後に年金生活をする高齢者夫婦が自宅で空き部屋を利用して、学生等向けの下宿や、その町を訪れた人に部屋を提供し、退職後の収入を得ることがあります。年金生活者が年金を補うために経営する、民泊用の不動産が「ペンション」と呼ばれるようになったのです。

不動産経営の新しい形(オペレーショナルアセットとしての不動産)

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